広島の自助グループ 「NPO法人 小さな一歩・ネットワークひろしま」

自死遺族支援、自死(自殺)防止のための支え合い

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活動の主旨と主な内容「こころのともしび」の日々 ≫ 「その話、面白いね。」という好奇心が人を元気にする ≫

ともしび 日々通信

「その話、面白いね。」という好奇心が人を元気にする

最近ちょっとうれしいことがありました。

近年、不安障害とうつに悩んできた方が傾聴に来られていました。
その方(Aさん)は、元気な頃に長年、ある楽器の先生をされていたのです。
でも、最近はその気力がなく、奏でることも音色を聴くこともできずにいました。

私たちは、その方が今抱えているこころの問題をなんとか軽くできないかと
一緒に悩み、考えていました。でもなかなか簡単に解決がつくものではありません。

傾聴が終わって、一緒にお茶を飲んでいるとき、その場にいた別の利用者さんが声をかけてきました。
その方(Bさん)も音楽が好きな方です。

話の途中で、Aさんが長年親しんできた楽器や曲の話になりました。
Aさんが相談者と知らないBさんは、その楽器の話が面白い、と身を乗り出して話を聴きます。
「最近元気がなくて楽器にも触れていないし、音色も聴いていない」と言いながらも、
Bさんと話をするAさんの目に力が戻り、声にも張りが出てきました。

「代表的な曲ってこれですよね」とBさんがスマホを検索し、音色を出すと
Aさんの目は輝き、凛として、その曲について“プロの目で”熱心に楽しそうに語りました。

「Aさん、今度一緒にCDを聴きましょうよ。また曲のお話しをしてくださいね」と声をかけて送り出すと、
Aさんは目にいっぱいの涙をためて、何度も何度もお礼を言いながら帰りました。

その姿を見ていたBさんは「自分はAさんの状態を知らずに余計なおしゃべりに熱中してしまった」と反省してましたが、
「とんでもない、Bさんと話しているうちに、Aさんの目に光と力が戻って、声が違ってきましたよ」と私は何度もお礼を言いました。

私たちは何をしてきたんだろう。
Aさんを何とか元気にしたい、励ましたいと思うあまり、今の、弱くなっているAさんばかりを見すぎていたのではないか。

もともと、Aさんは何十年間も人に音楽を教えてきた、強い生きがいを持って生きてきた人なのです。
忘れかけていた「その強さ」を、Bさんが純粋な好奇心をもってよみがえらせたのです。

「こころのともしび」では時々こんな光景が見られます。
傾聴を担当する我々も、限られた人生経験や知識しか持っていませんし、価値観も限られています。
ときには、色々な人生経験や興味関心を持った利用者さん同士、気があう仲間同士の方が力づけになることがあります。

「ピアサポート」ってこういうことじゃないかな。

2016年04月27日 13:53