令和3年度年間事業報告
1 事業の成果1)分かち合いの開催
毎月「こころを休憩する会」、隔月で「自死遺族の希望の会」を開いた。参加者は平均8人前後。運営者も参加者も当事者限定の「自助グループ」であり、精神保健、医療、行政担当者は運営に関わっていない。
分かち合いでは“一期一会”を大切にし、「身近の人には、遠慮や噂の広がり、相手との関係への影響を心配して、かえって本音が言えないことも多い。ここは、何のしがらみもない他人の集まりです、だからこそ気兼ねなく『心の澱』を吐き出して下さい」と話す。
また、「分かち合い」の後の軽食会では、必ず手作りの軽食やデザートを出した。
温かい食事や甘いお菓子は、語り合いとは違った意味で心を癒し、分かち合いで涙を流した後、笑顔を取り戻して帰宅する人も少なくない。
≪自死遺族の希望の会≫
■目的・内容:自死遺族当事者限定の語り合い
■開催回数:6回
■参加者 自死遺族/延べ44人
≪こころを休憩する会≫
◆目的・内容:精神障がい者及びその家族に限定せず、“こころの問題”を抱える当事者同士の語り合い
◆開催回数:12回
◆参加者 /延べ85人
2)精神科医によるこころの健康相談
◇目的・内容 精神面で悩みのある方に対する精神科医による専門相談や助言◇開催回数:6回
◇利用者 「こころのともしび」利用者 他/36人
◇対応者 「メンタルホスピタルかまくらやま」名誉院長 渡邉直樹先生
3)常設型傾聴スペース「こころのともしび」の開催
今日、精神的不調を訴える人が増え続けている一方で、職場の環境や当事者周囲の人も効率を求められる生活を強いられており、「助けてあげたい、力になってあげたい」という気持ちをそれぞれが持っていても、時間に余裕がないか、または経営・業務効率上、1人の当事者に長い時間を割くことができない、という現実問題がある。また、心理カウンセリングは、保険対象外のために高額であり、長期間継続してカウンセリングを受けるために必要な多額の出費が負担なために、完治する前に断念している人も少なくないことに気づき、「安心・安全を確保しつつ」「いつでも『話し相手』になってくれる見守りがいる」自由な時空間を提供すべく、平成27年度常設型傾聴スペース「こころのともしび」活動を開始した。
目的・内容
1、個室傾聴
2、フリースペースの開放(団らん、会話、休息、読書など)
3、昼食の提供
4、ミニイベントや講習会、相談会
5、電話やLINEによるリモート傾聴
●開催日:GW,年末年始を除き、毎日活動
昼食提供:週5回(月~金)
●対象者:精神障害者、気分障害患者、精神障害患者の家族、自死遺族
その他孤立感や生きづらさを抱える一般市民
■総活動日数:340日
■延べ来訪者数:2026人 ■食事提供者数:1025食
■個室傾聴,電話・LINE傾聴:1057人
4)広島市一時生活支援事業(個別支援型(女性))通称「女性専用シェルター」
令和2年度に引き続き、今年度も広島市より「一時生活支援事業(個別支援型(女性))」を受託した。(4年契約)
「一時生活支援事業」とは、経済的な事情で住居がない,またはネットカフェ等の不安定な居住形態にある方や、やむをえない事情によって家族が養うことができなくなったが単身で自立するためのお金や住居,仕事などの準備が整わない方などに、一定期間、住まいや衣食を提供することにより、安定した生活を営めるように支援を行うものである。通称「シェルター」とも呼ばれている。
小さな一歩のシェルターは、女性のみを対象(男性は入室禁止。ただしおおむね12歳未満の男子は利用可能)とし、定員は3世帯。自立までの環境が整うまでの必要な期間、住むための部屋、三食、生活に必要な衣類や生活用品を無料で提供する。また、「こころのともしび」での傾聴カウンセリングや各種専門家による相談会など、精神的な支援も無料で利用できる。
小さな一歩では、それぞれの事情をお聞きした上で利用に向けて、担当窓口である「広島市くらしサポートセンター」への“つなぎ”を行った。
また、入居中は精神障害者のために医療機関探しや医療機関への同行、シェルター退去後の住宅環境準備のための家探しや下見への同行,生活用品購入のためのリサイクルショップ同行など、入居者の自立生活に向けたきめ細かな支援も行った。
■利用者数:17世帯
■延べ利用日数:857日(1世帯平均:50.4日)
【令和3年度の傾向】
令和3年度は9月、11月、2月に、コロナ感染防止対策の緊急事態宣言やまん延防止対策が発令されたことを受け、フリースペース開放の制限や食事提供を中止するなど、活動を限定する時期があった。また、来訪者にも、家庭外の会食を自粛する傾向が強く、「こころのともしび」でも食事提供数は前年比56.2%と大きく減少したが、来訪者人数は前年(1948人)に比べて2.4%増と、横ばいであった。
その背景には、コロナ感染防止対策のために公共文化施設の利用が制限されたり、日常的な文化スポーツ活動やコミュニティ活動,イベントの中止によって「外出機会が大幅に制限された」ことが影響していると思われる。
「人を会う場所や外出の機会がなくなった」と言われる来訪者が多く、「この場所が開いているので、出かけて人と話すことができる。『コロナ禍』でも閉じないでくださいね。」との声も多く聞かれた。
同時に「LINEによる傾聴」「電話傾聴」が大幅に上昇したため、傾聴対応数が前年同期に比べて増加しており、電話傾聴も含めると、年度末の3月の総傾聴数は前年度に比べて7割増と、大幅に増加している。