親子とは一番近くて一番重い関係
「こころのともしび」には、こころに苦しみを持った本人だけでなく、
子どもがうつなどの「気分障害」を抱えている母親の相談者も多く訪れます。
始めの相談は、「子どものことで、、、」と切り出される方も、お話を聞いているうちに、
まず、親である相談者の、行き詰まり感や焦りを「緩めてあげないといけない」と思われて、
「子どもさんが相談に来られる前に、まずお母さんが来てお話をしてみませんか」と呼びかけます。
ほとんどの方が、自分自身が行き詰まり、考えがもつれ、視野がせまくなっているからです。
当事者を支える、一番身近な人の心を緩やかにし、視野を広げ、たまったガスを抜くことも傾聴の役割だと思うのです。
そして相談に来られると、
「子どもの『心の病』がよくない、どうしてあげらたらいいんだろう」
「自分は何をしたらいいんだろう」
「とても心配しているのに本人が自分に相談してくれない」
「夫が自分の心配する気持ちを正面から受け止めてくれない」
そんな、母親としての辛さ、苦しさを打ち明ける人が少なくありません。
お話を聞いていると、親、という存在のもどかしさや限界に、私自身も一緒に辛くなってしまいます。
少し前に、うつを経験したある人が
「子どもの立場からすると、親には心配をかけたくない、のが自然の気持ち。親を苦しめていると思うと、倍、自分も辛くなる。
親はむしろ『何とかなるよ』くらいの鷹揚な気持ちでいてほしい」と話してくれて
そうなんだ、、、、でも、それは難しい、と思ったことがありました。
なぜなら、親の仕事は「子どもを心配する」ことだから。
一方で、子どもの頃から「親が自分のことを心配してくれなかった、自分に関心を持ってくれなかった」と、
それが大人になった今も病根のように残り、そのことが根本原因となって、対人関係がうまく運べない、と
悩みを相談しに来る人もいます。
親子って、本当に一番近くて、一番重い。
色々なお話を聞きながら、ふと思うのです。
「もし、自分が娘のうつに向き合うにあたってこういう場所があったら、心をゆるやかに広くして、娘と向き合うことができただろうか、
その結果、いのちを救うことができただろうか、」と。
その答えは出ることがありませんが。