遺骨
亡くなった後も家庭の事情が複雑で、家族そろってのお墓参りができなかった、
他の親族がその方を誘うことなく法要をすませてしまったのです。
自分の足で墓参りに行けない方で、とても落ち込んでいたので車で一緒に行きました。
山あいのお寺にある墓地に、お母様は合同納骨堂に合祀されていました。
遺骨の一部をいまも手元に持っているその方は、合祀されたことが悔いとして残っていて、
「母と自分が2人で入れるお墓を建てたい」とぽつりと言われました。
その方にとっては少なくない出費です。
それでもその意志は固いようでした。
「かなうといいね」と、墓地の中の空き区画を一緒に見て回りました。
私も娘の遺骨の一部は今も自宅に置いています。
自分が埋葬される墓に、隣に置いてあげたいのです。
そうすれば、天国でまた隣に並べるような気がします。
初夏の山寺は緑と花に囲まれた静謐の中にありました。
新緑が美しいほど、青空が澄んでいるほど、風がさわやかで気持ちいいほど、
その中にいると
そのような美しい季節に背を向けて、暗い部屋でうずくまっていた娘の姿がよみがえるのです。
2015年05月27日 20:31