過労自死の背景にあるもの
最近、若い人が就職後短期間で、過労死や過労自死に追い込まれている事件を見て心が痛みます。
11月でしたが、22歳の英会話講師が「持ち帰り残業」も含めて月の残業時間が111時間なったことから
うつ病を発症し、自死に至ったことを裁判所が認め、労災が認定されました。
この英会話教室に就職して2ヶ月でした。
http://www.asahi.com/articles/ASGBN6RTLGBNPTIL023.html
残業時間111時間が2ヶ月間。休日出勤も含めて考えると例えば
4時間の残業(例えば17時が定時退社なら21時まで)が22日で88時間。
それに加えて、週休2日のうち1日、8時間仕事をすると32時間。
これでだいたい120時間。このように具体的にしてみると、その過酷さがよくわかります。
今年度から厚生労働省が従業員50人以上の企業に「職場のストレス診断」を義務付けました。
http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html
私はいま仕事でこのストレス診断分析に関わっていますが
この「診断基準」に沿って言うと、「仕事上のストレス度判定」は4つの要因の分析で行います。
「仕事の量的負担」(仕事の量、仕事時間に関するストレス)
「コントロール」(自分のペースで仕事ができる、自分で仕事の手順を決められる、仕事の方針に自分の意見を反映できる)
「上司の支援」(上司と気軽に話ができる、困った時頼りになる、個人的なことも相談できる)
「同僚の支援」(気軽に話ができる、困った時頼りになる、個人的なことも相談できる」
もちろん、「個人のこころの健康」全体には私生活や身体のことも関わっていますが、
職場に起因するストレス要因は、複雑なようでこの4要因でほとんど集約されます。
分析結果の傾向を見る限り、職場による差が大きく、
総合的な「こころの健康リスク」に大きく影響するのは「上司の支援」「同僚の支援」。
仕事がハードでも職場での助け合いがあり、自分が主体的にその仕事に取り組むことができる環境なら
人は乗り越えて行ける、ということが数字的に表れています(もちろん残業時間を容認するつもりはありませんが)
例えばこれが、
社内が新規事業のために一丸となってする残業と、
上司や同僚はさっさと帰る孤独な残業。
頑張る姿を上司が見守り、支援を送ってくれる中での残業と
ぎりぎりの体で頑張っている人に追い打ちをかけるような非難や叱責がある職場。
自分では処理しきれない仕事を同僚や上司がサポートする残業と、
逆に同僚や上司が有無を言わずに仕事を丸投げしてくる残業。
残業時間は同じでも、心のストレスは同じでしょうか。
職場に由来してストレスを最も高めるのは
「自分だけがこんなに仕事を押し付けられている」という『孤立感』だと言います。
希望を持って就職した若い女性が2ヶ月でうつ病から自死にまで追い込まれるという悲劇。
単純に「残業時間」だけが判断基準なのか。
上司や同僚が彼女の持ち帰り残業を把握し、手助けする言葉をかけていたのか。
持ち帰り残業は強いられたものだったのか、彼女自身が自分の仕事の質を高めるためにしていたのか。
ぎりぎりまで体を酷使している彼女に追いうちをかけるような非難や叱責はなかったのか。
本当の「過労自死」の原因をもっと深く調べる調査をしないと職場は改善しないのでは。
「ちょっと仕事がきついとうつになるメンタルの弱い若者」という間違ったレッテルが蔓延しないように。