死んだ人は生きている人の誰よりも人を動かす
10年前に広島県廿日市市で起きた「女子高校生殺害事件」は今も未解決です。
地元の警察署長や捜査員、聡美さんのお父さんの忠さんなど36人が10月5日、
廿日市市内にある宮島行き渡航船乗り場で
改めて、犯人捜査につながる情報を呼び掛けるチラシ3000枚を配りました。
10月6日の中国新聞に、被害者の父親である北口忠さんを取材し続けている記者が書いた「担当記者の視点」という記事がありました。
この中で
「忠さんは自身を『強くもなく、積極的でもない普通の父親』という。
どれだけ気持ちを奮い立たせ、語ってくれたことだろうか。
遺された家族の心情をすべて理解できるとは思わない。
だが、子を持つ同じ親として忠さんの言葉を一つ一つ受け止め、記事にしてきたつもりだ。」
と記者自身が語っています。
取材記者のこのような想いが紙面に載ることは珍しい。
それほどに、北口さんの強い意志に心動かされたということでしょう。
北口忠さん。
ほんの前日までは、どこにでもある普通の親子で、思春期の娘の扱いに困ったりしながら
平凡でも普通の「父親」としての毎日を過ごしていたのでしょう。
昨日普通にそこにあった毎日が突然、崩壊する。
昨日普通にあったものがいかに大切でかけがえのないものだったを、突然知らされる。
壮絶な苦しみ、犯人への怒り、自分の人生の喪失感。。。
「もっとこうしていたら被害に遭わなかったのでは」という自責感もあるかもしれない。
これらの想いが、「強くもなく、積極的でもない普通の父親」である忠さんをつき動かし、
周囲の支援者もメディアの人も忠さんの強い意志に動かされたのでしょう。
「生きている人はぼくたちに向かって「そうだ」とも「そうでない」とも言ってくれるが
死んだ人は何も言わない。だからこそ、死んだ人は全てを生き残っている人に託している。
生きている人は、死んだ人のすべてを受けとるよう、死んだ人から期待されているのである。」(岡知史「知られない愛について」より)
忠さんの闘いは続いています。殺人事件に時効がない今日、
犯人逮捕の日まで終わることはないでしょう。
聡美さんは帰ってこないけれど、天国で一緒に戦ってくれていると信じている、と
テレビのインタビューで話されたいたことも覚えています。
「それだから、死んだ人はしばしば生きている人の誰よりも、人を動かす。
生きている人に応えようとして動く人は少ないが、死んだ人に応えようとして動く人は多い。
なぜなら生きている人の命は生きている人本人のものだが、
死んだ人の命は生き残った人たちのものだからである。」(同上)
どうか忠さんの信念が実を結び、犯人逮捕につながりますようにと願わずにはおれません。
情報提供は 0829(31)0110 廿日市警察署
北口さんのブログはコチラです。県外の方もぜひこの事件を思い出してください。