「自殺未遂者は迷惑」と公言する医師
広島県中央地域保健対策協議会が今年3月に発表した、救命救急医療機関、消防署、身体科医師(内科、外科)に対して実施した「自殺未遂者対応に関する調査報告書」がホームページにアップしています。前半 ⇒ https://www.pref.hiroshima.lg.jp/book/view.php?id=63
後半 ⇒ https://www.pref.hiroshima.lg.jp/book/view.php?id=64
概要版 ⇒ https://www.pref.hiroshima.lg.jp/book/view.php?id=62
救命救急医療機関が33人が回答し、自殺企図者に対応した回数は29件。
患者の属性や自殺未遂歴、精神科受診歴、搬送後の対応などを回答していますが、件数が少ない上に、無回答の人が多い項目が多いので統計調査結果としては「?」な結果になっています。
身体科医師の意識調査は199人が回答。
●自殺未遂者の診察経験がある割合は55%と半数強。
●精神的ケアの必要性の有無の確認について
・「今も死にたい気持ちが強いかどうか確認」を「必ずする」は27%
・「自殺企図にいたる背景の確認」を「必ずする」は25%
・「公的な支援や身近な支え手がいるかどうかなどの確認」を「必ずする」は26%。
「確認しない理由」は「必要かどうか不明。考えたことがなかった」「直接の治療関係がない」「精神科ではないのでむやみに刺激したくない」「自殺に関する診療を行っていない。専門外」「必要性がない」など。つまり、”関係ない”という回答。
●身体的処置後に自殺リスクが高いと判断した場合は「精神科医を紹介」が43%、「精神科医への受診を勧める」が68%。これに対して「相談機関へ紹介状を書く」は19%、「相談機関への相談を勧める」が20%。
●自殺未遂者への対応について
「精神的ケアを行う人的・時間的余裕がない」は88%、「自殺未遂者への精神的ケアは難しい」が88%、「精神科保健医療機関への紹介の必要性判断がむずかしい」が59%、「家族への指導が難しい」が78%。
●「自殺未遂者対応マニュアル」については「ない」「あるかどうかわからない」が94%。
●「広島県精神科救急医療システム」について、「知らない」が58%。
●精神科医師とは個人医師レベルを除くと「連携を取っていないが61%。
●市町や福祉事務所、保健所、精神保健福祉センターとは個人医師レベルを除くと「連携をとっていない」が59%。
はたして、「知ろう」「取り組もう」「連携しよう」という気持ちがあるのか。
一方で、自殺未遂者への支援体制で必要なこととして1位にあがるのは「精神科医療機関や相談機関との連携」が1位で69%。つまり、自分以外の誰かがしたらいい、ということでしょうか。
●「自殺未遂者に対する対策への意見」の中には
「精神科のある病院のみへ搬送依頼をしてほしい」
「自殺未遂者の中に本当に死のうと思っている人は少ないと思う」
「急性期病院で当直をしていて自殺未遂の症例はむなしい。自殺企図そのものが救急医療機関に大迷惑をかけていることを自殺予防の1つのアドバイスに入れてほしい」
「救急医療の負担になり、腹立たしい限りです」
など、自殺未遂者を社会の迷惑者として、
「関わりたくない、来てほしくない、精神科だけでなんとかしてほしい」。これがホンネなんですね。
これらの結果を受けて報告書では、今後の取り組みとして、
「自殺未遂者患者対応マニュアルの作成」「身体科救急医療機関と精神科医療機関との連携体制のあり方の協議」「患者・家族向けに精神科受診を勧めるパンフレットの活用」「医療関係者への研修会」「過量服薬予防」「自殺未遂者支援機関や窓口に関する情報提供や支援技術の向上」などをあげていますが、
既定路線上のものばかり。プランは立派でも、対応する現場の「こころ」がこれでは、掛け声もむなしいばかり、といつもの溜息です。
6月のシンポジウムの際に、広島県精神保健福祉課が実施した専門職研修にも、医師の参加は0でした。
裏付ける調査結果です。
2014年09月11日 19:06