「数年間誰にも言えなかったことを聞いてくれてありがとう」と自死遺児は言った。
コロナ禍の中、物心ともに追い詰められる人が増え、特に若い人々の自死が増加していることがいま、大きな社会問題となっています。小さな一歩では、昨年4月から、電話やLINE傾聴を強化しました。昨年秋から特に自死遺族からの相談が増加しています。エリアを問わずSOSの声が届きます。
気になることもあります。「誰にも言えなかった。ネットを必死に調べてやっとここにつながった。この話をしたのは初めてです。」と言われる方が多いことです。
全国各地に自死遺族支援の窓口は活動はあるはず。ネット検索をすれば地元の団体や窓口も見つかるはずなのに、、何かが心の障壁になっているのでしょうか。
また、中に、特に傷ましいお話しを聞き、いたたまれない思いになることもあります。
それは未成年の自死遺児からの訴えでした。(仮にAさんとします)
数年前に、暴力と脅しに耐えられず親御さんが自死された。
遺された親族は、住んでいる地域で騒ぎになったり噂が広まることを嫌い、関係者や警察に申し出ることもせず、むしろこのことをひた隠しにしている。
加害者からAさんへのいやがらせは今も間接的ではあるが続いている。
親を亡くした悲しみ、助けられなかった自責感に加えて今も続く恐怖感で家に引きこもっている。
親族は、相談に乗ってくれるどころか、自死のことを「なかったこと」にしようとしている。
電話口のかぼそい声を聞きながら、遠方にいて何も力になれない自分をもどかしく思いました。最小限、今のAさんの身の安全を守り、安心して家から出られるために、何か方法がないか、必死に知恵を絞り、思いつくまでの相談窓口をや相談方法を伝えましたが、電話口の自分では何もできない。忸怩たる思いでした。
私が聞く限りでも、自死遺児の中には、一番頼りになる親を「自死」によって失うだけでなく、遺児を抱擁するべき、遺された大人が生活力を失うほど消耗してしまうために、「子どもとしての普通の日常生活」が成り立たなくなる。
そんな日々の生活の危機にいきなり直面させられる子どもも少なくありません。
自死遺児支援は心理的な支援だけでなく、生活を支える社会的支援、ケースワークも一体で行わないといけないと痛感します。
Aさんのようなケースも、未成年のために、自力では裁判で訴えることができず、泣き寝入りするしかないのが現状です。
最後にAさんは「数年間、このことを誰にも言えなかった。初めて聞いてくれてありがとう。またかけてもいいですか?」と言われて電話は終わりました。「いいよ、いつでもいいよ」と言いながらなぜか泣いてしまいそうになりました。
2021年02月05日 11:39