何でも、始めは小さな一歩だよね
先日、うれしいことがありました。
以前から週に1回訪問している、心因性難病を持つAさんとお話しをしていました。
Aさんは一人暮らしで、外出ができず、頼りになる身内もいないため、
いつも孤独と「1人の時に何かあったらどうしよう」という不安を抱えて暮らしています。
特に、祝日で、いつもなら訪問するヘルパーや訪問看護師が来ない日、
誰も自分のそばにいない、という不安と寂しさがとても強くなる、ということです。
でも、心的障害が原因で「車に乗ると恐怖感の発作が起きる」と言われていました。
そのため車を利用した遠出の外出ができない、
だから「人に会うための外出も無理」と言われていました。
私が「車で送迎しますよ、車に乗れる練習につきあいますよ」と言っても、首を縦に振りませんでした。
先日、私は、「こころのシェルター」の計画の話をしました。
「Aさんのように、1人で過ごす孤独や心細さが強い人こそ、この場にお連れしたいのですよ。
そこに来られたら、色々な人と、無理なく自然に話かけたり話しかけられたり。
皆で、温かい食事を囲んだり、疲れたらお昼寝をしたり。
そんな風に、『家庭の茶の間』にいるように自然に人と触れ合うことができるのですよ。
「こころのシェルター」について考えるとき、いつも貴方のことが頭に浮かぶのですよ。
でも、それは車に乗れるようになったらね。
無理ではなくね、少しずつ近距離から。だんだんと距離や時間を増やしていって、平気になったらね。
今は無理でもね、『少しでも練習してみようか』と思ったら、いつでも一緒に練習しますよ」
Aさんが、ふっと言いました。
「今日はどこに車を停めているんですか?」
「え、近くのスーパーの駐車場だけど」
「今から練習してもいいですか?」
「ええ、もちろん!!」
雨の夜でしたが、急きょ、初めての練習になりました。
5分間くらい、Aさんの家を出て近所の道を車で走りました。
「気分はどうですか?」
「今までは、緊張して、乗った途端、動悸が激しくなったり頭が痛くなったけど、
今日は短時間だとわかっているから大丈夫です」
「それはよかった。少しずつ、距離を伸ばしていけるといいね」
Aさんを家に送ってから家路につきながら
「小さな一歩だよね、これも」と1人でうれしくなりました。